2023年、Apple(アップル)は自社イベントでのプレゼンテーション全てをiPhoneで撮影することを発表した。これは自社スマートフォンのカメラに対する自信の表れと言える。そして、その自信は裏付けされた。今年2024年、日本で映画「ミッドナイト」の制作にiPhone 15 Proが使用されたからだ。Samsung(サムスン)も負けじと月までズームできるスマートフォンを製造し、Xiaomi(シャオミ)はカメラレンズを取り付けられる携帯電話を設計した。開発が進むたび、スマートフォンはプロ仕様のカメラ機器の領域に少しずつ近づいてきている。
また、スマートフォンのカメラの進歩やCapCut などの使いやすい編集ソフトにより、ビデオコンテンツの作成がこれまで以上に簡単になった。ビデオ撮影を始めるのに必要なのは、数時間のYouTubeチュートリアルだけということになる。これは私たちのようにハイクオリティ動画の制作を専門とする企業にとって脅威となるのだろうか。私たちはそれについて考えてみた。結果、比較すべき点は次の通りだ。
センサーサイズ
スマートフォンのセンサーサイズは、小型の1/2.55インチ(Samsung Galaxy S23 Ultra)から、比較的きちんとした1インチ(Xiaomi S Ultra)まで様々だが、レンズ交換式カメラ(ILC)のセンサーサイズは、4/3インチ(OM-1 Mark II)からフルフレーム35mm(Sony FX3)までと、より大きなものが一般的だ。つまり、レンズ交換式カメラの最小センサーは、スマートフォンの最大センサーのほぼ4倍の大きさということになる。大型センサーと高い画素数のおかげで、レンズ交換式カメラは解像度が高く、ダイナミックレンジが優れているだけでなく、色の正確さやディテールにおいても優れた画像を撮ることができる。これらの特性は、ポストプロセス時に特に役立つのだ。
レンズの汎用性
通常、スマートフォンには広角・標準・望遠の3つのレンズが搭載されているが、レンズ交換式カメラの場合、ありとあらゆる場面に対応するために数百種類のレンズから選ぶことができる。スマートフォンは記録中にレンズを切り替えることができず、デジタルズームを使用することで画質が低下するということがよくあるが、レンズ交換式カメラは非常に鮮明な最新のレンズを通してでも、魅力的な不完全さを持つヴィンテージレンズを通してでも、ビデオグラファーが伝えたいストーリーを伝えさせてくれる。
マニュアル操作
クリエイティブな成果にこだわるなら、マニュアルモードを使いこなすことが必要不可欠になってくる。シャッタースピード、絞り、ISOなどのマニュアル設定に関しては、ミラーレスや一眼レフカメラだと細かく設定ができるため、難しい条件下でも完璧なショットを撮影することができる。一方で、スマートフォンも継続的に進化を続けてはいるが、同レベルの精度は提供できないのが現状だ。さらに、スマートフォンのAI主導機能は最適な画像撮影のために設定を自動的に調整してくれるが、これらの調整はスマートフォンで表示するための最適化だ。そのため、他の媒体向けに画像を編集しようとすると厄介な問題が発生してしまう。
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では、私たちはレンズ交換式カメラを手放すことになるのだろうか?まだその時期ではない。あのずっしりとした重みのあるカメラが与えてくれるクリエイティブ面での可能性に私たちは魅了されているからだ。コマーシャルやプロモーションビデオなど、非常に鮮明なディテールと色の精度が要求されるプロジェクトの場合は特にだ。だからといってスマートフォンを無視しているわけではない。優れたアプリやアクセサリと組み合わせることで、スマートフォンカメラでも素晴らしい画像を撮影できるし、レンズ交換式カメラよりはるかに軽量だ。旅行先での撮影、イベント取材、ソーシャルメディアへの投稿には、スマートフォンが最適だと言える。
スマートフォンのカメラが急速に進化し続ける中、私たちは創造という名のツールボックスにさらに新しいツールが加わったことを嬉しく思う。