2020年8月〜11月にかけて、大分県の県産品PR映像の制作に、プロジェクトを受託された大分朝日放送(OAB)さんからお声がけを頂き、STEQQIも制作会社としてご一緒させて頂くことになりました。大分県の食材を海外に向けてPRするというのがこの映像制作の主な目的で、東アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、北米などを主要ターゲット国として、プロジェクトは始動しました。おおいた和牛、干し椎茸、ブリ、マグロ、日田梨、甘太くん(さつまいも)が今回のテーマとなった大分県 ち。今日は改めてSTEQQIの制作チーム:Phuong (プロデューサー)、Bill (監督)、Kanae (プロジェクトマネージャー)3人で少しゆっくりと同シリーズ制作について、振り返ってみる事にしました。
Q: この映像シリーズを制作してみた感想は?
Bill: 食文化が豊かな国に生まれた事もあって、テレビなどで面白い「食のCM」は毎日のように目にしてきました。いつも素晴らしい動画を見ては、すごく感銘を受けていたので、今回自分も食をPRする映像を制作できる事になって、まずはその事に本当にワクワクしていました。
Phuong: 何よりもまず、これまでで最もハードなプロジェクトでした。少なくとも1ヶ月間は毎日のように県内あちこちを往復しながらの撮影が続き、細かい調整も同時に進行しなければなりません。翌日の撮影の調整もしながら、夜の10時に撮影用の備品を探して運転中、なんて事がザラにある日々でした。
Kanae: これまでで最も多い本数の映像を、最短のスケジュールであげていくという新しい挑戦となったプロジェクトでした。大分県の事、県産品の事、そして映像業界の事も含めて、新しく学ぶことも多くあり、ますます頑張っていかなくてはと思わせてもらったプロジェクトでした。
Q: どんな映像シリーズだったのか教えてください。
Phuong: 大分県産品6品を海外のマーケットに紹介するというのが、今回のメインテーマでした。具体的には、東アジア、オーストラリア、ヨーロッパと北アメリカが対象国として選定されていました。おおいた和牛、干し椎茸、ブリ、マグロ、日田梨、甘太くん(さつまいも)の県産品をそれぞれの食材につき、2バージョンの映像で紹介していく事になっています。1本めは30秒の短編で、ショッピングモールやスーパーなどに設置されているモニターで常時流す広告用映像です。もう1本の長編は、生産地、品質管理から生産過程・手法に至るまでのそれぞれの食材がどのように作られているのかを、展示会や営業の際に各国のバイヤーさんに向けてご紹介する商用ツール用の映像になっています。
映像の中で、視聴者の方に伝えたい必須項目が3点ありました。第一に、この食材が日本で生産された食材である事、次にこれらの食材に興味を持ってもらい、食べてみたい、調理してみたいという気持ちになってもらう事、そして、食材への信頼感を構築する事です。最初の項目については、書道や相、侍、舞踊に和太鼓、そしてアイドルなど、見た瞬間に日本と分かっていただけるようなキャラクターを映像内に盛り込むことでクリアしました。大分県に所縁のあるそれぞれの分野でご活躍の方々にご出演の依頼をし、撮影のご協力を頂きました。次に、中華料理、西洋料理、日本食、パティシエの方々にご協力を仰ぎ、多彩な食材の活用方をご紹介しながらも、見ても美しい、食べても美味しい魅力的な一皿を作って頂きました。料理人の皆さんと輸出対象国の食文化について考慮しながら、メニューを選定したり、見せ方やお皿を選んでいく過程も面白い作業でした。そして3つ目が、視聴者と生産者を繋げることです。当然ながら、住んでいる国も違えば、話す言語も違う人々です。しかしながら、誰しも一度は見た事があるだろう、海岸線から登る朝日や、聴いたことのある果樹園の風の音などの要素を取り入れたり、少しでも品質の高い食材を生産しようと日々研鑽を続ける生産者の皆さんの姿を映し出すことなどで、言語を超えた共感を生み出せるようにと考えていました。
Q:このプロジェクトにはどんな特徴(技術的に)がありましたか?
Bill: これまでの制作の中で最も多種多様な装備や、技術を用いたプロジェクトだったと思います。いつもと同じようにカメラはCanon C200を使用しながらも、レンズは、マクロプローブも含めた様々なレンズを活用して、色彩美しく、映画のような映像、かつ高ダイナミックレンジを実現できるように撮り進めていきました。スローモーション映像については、Panasonic EVA-1を使用して撮影しました。
プロジェクトが完了した今、改めてプロダクトCMの撮影は思っているほど簡単じゃないという事を感じています。食材が美しく、かつ美味しそうで、映像としても魅力的であるように見せるため、何度となく撮影手法を変えたりしながら、思い当たることは何でもやってみました。スムーズなカメラの動きと照明の組み合わせのタイミングがピタッと会った瞬間に、その映像は撮れることが分かってきます。言葉にするとすごく簡単ですが、この瞬間に辿り着くのは中々大変です。試行錯誤を繰り返しながら、
食材に微細なスプレーを利用しながら、かける水の量で光の反射に変化をつけてみたり、食欲をそそるような湯気がしっかり映るように、室内の温度を極限まで下げてみたりと、単純ではあるものの様々な手法を試してみました。やればやるだけ、その瞬間がいつ訪れるのかが分かるようになってきました。一度掴んでしまえば、あとはその状況を作り出す事が容易になっていきます。口にする生きた食材ですから、フレッシュで、本物がまさに目の前にあるかのように映していく必要があります。そこを映像内で表現していくには、機材の選択のみならず、かなりの技術や下準備、撮影量が必要でした。
Q: このプロジェクトで印象に残っている事はありますか?
Kanae: 大分県で暮らしながらも、大分の農産物ってこんなに美味しかったの!という感動の瞬間が何度もあった事です。生産者の方々の一日のお仕事に密着させていただきながら伺ったお話や、お話し下さる農家さんや漁師さんたちの表情などは今でも印象的に覚えています。県産品を生み出す方々に出会い、改めて豊かな大分に魅了されました。
Bill: 明方3時に起きて佐伯まで運転してマグロの撮影に行った日のことは忘れられません。周りの人達にもそんな経験できるなんて、めちゃくちゃラッキーだと言われますが、確かにその通りだと思います。70Kgものマグロが目の前で釣り上げられて、輸出先のドバイに向けて出荷準備が整うまでを追いかけながら撮影させてもらいました。生産者の方が、美味しい食材を提供するためにここまで努力されているのかと驚くとともに、この撮影の後からは、これまで以上に食べ物に感謝する気持ちが自分の中に生まれたような気がしています。
Phuong: KanaeとBillの話に加えて、県内の料理人の方々とご一緒したことも私にとっては忘れられない思い出です。食材を最大限に活かしながら一皿一皿を生み出すプロの仕事には本当に感動しました。制作チームとしては、それぞれのお料理を最大限美味しそうに映す撮り方、また映像内で印象に残るようにどう見せていくかを考える作業も楽しい時間でした。撮影後にお料理を試食させていただいた事も、もちろん!忘れられない思い出です。
Q:今回のプロジェクト参加は、今後のSTEQQIの制作活動にどのように影響すると思いますか?
Bill: 撮影前の作業・計画がいかに重要であるかということを痛感しました。シェフ、演者、芸術家の皆さんなど各界のプロの方々とご一緒する時に、当然ながら限られた時間の中で映像を撮っていく必要がありますし、撮り直しも容易ではありません。時間内に効率的に、そして確実に撮りあげていくという事に取り組んだ経験は今後のプロジェクトにも活かされていくと思います。
Phuong: 多岐にわたる必須項目を映像の中に盛り込みながらも、それでもシンプルに映像として魅力的であるにはどうしたら良いのかについて本当によく考えました。1つのプロジェクトに多くの関係者がいる場合、結果(制作物)だけでなく制作過程の重要性も増してくるように思えました。そんな中でもプロジェクト関係者の方々の中で、またぜひ次回もご一緒しましょうね、などと声を掛けて頂いた時はとても嬉しかったですし、今後も制作を続けていく上で本当に励まされました。
Kanae: 多くの関係者がいる中での制作時に、実際にPRしたい対象(海外のお客様)にとって、魅力的かつ効果的な映像であるかという事に集中することが一番チャレンジングな部分であり、鍛えられた部分だなと思っています。