6ヶ月のプロジェクト期間を経て完成した、自然・科学ドキュメンタリー映像:「別府 THE ONSEN JOURNEY」。別府温泉の知られざるストーリーを地質学的視点から探っていくこのドキュメンタリー映像。当然ながら綿密な事前調査と事実確認が必要とされ、さらに映像制作における技術面でも、コンピューター・グラフィックス(CG)を多用するなど、STEQQIにとって新たな挑戦となった作品でした。
まずはこのドキュメンタリーの制作で必要と思われる情報を、本や資料、別府の歴史をご存知な方々とお会いするなど、ありとあらゆる方法で収集しました。なかでも、地球物理学者であり京都大学名誉教授の由佐 悠紀先生には、本作品の監修者として、科学データをご提供いただくだけでなく、特別講義をして頂くなど制作初期の段階から完成するまでの期間、温かいご指導をいただきました。50年以上に渡り別府の温泉を研究されてきた由佐先生から教えていただいた別府の温泉の歴史、先生ご自身の研究の歴史を映像化して盛り込めないだろうか、本映像のオープニングはそんな思いを込めて制作されています。
別府の歴史から人々とその生活の記録を辿る日々が続きました。歴史的な写真や地図を参考にしながら、ドキュメンタリー内で昔の設定をCG制作するのは、まるでかつての別府の町を復元しているような作業で、表現の仕様のない高揚感がありました。また、19世紀以降、温泉が別府に及ぼした社会経済的な影響にも驚かされました。人口も、1878年にはたった数千人だったのが、現在約12万人にまで増加しています。加えて、年間900万人以上もの観光客が温泉を目指して別府の地を訪れているそうです。私たち自身の別府への理解度が高まる機会でもありました。
今回のプロジェクトの撮影を通して、30以上の温泉施設にお邪魔させていただきました。別府の魅力でもありますが、どの施設でもオーナーさんやスタッフの皆さんがとても親切に私たちを迎えてくれました。営業時間外の撮影が必要な場合にも快くご協力をくださり、その上、撮影スタッフに「温泉卵を食べなさい」、や「ちょっとは休憩しよ」、と飲み物を差し出してくださるなど、たくさんの優しいお声がけや心遣いに励まされながら撮影を続けることが出来ました。最終的には、それぞれのロケ地で撮影した映像の中から選りすぐりのシーン(18施設より)が採用され作品を彩ってくれています。
温泉技術者の方や、温泉を利用して制作活動をするアーティストの方々にも出会うこととなり、温泉にまつわる地元ならではのストーリーやご自身の温泉との関わり方など、興味深い話を次から次に伺うことになりました。杉乃井温泉の地熱発電所は、ホテルの計647の客室と娯楽施設で消費される電力の40%を供給していること、さらに温泉成分は織物工芸にも変化をもたらすことを知ったのもそんな出会いの中ででした。同じ染料を利用しても、源泉に含まれる成分によって布に染まる色や発色が全く違ったりするそうです。
振り返ってみると、このプロジェクトはSTEQQIにとって素晴らしい経験(JOURNEY)となりました。最新の技術を採用して映画で使われるような音声や映像に挑戦してみたり、別府の魅力を再発見する事にもなりました。クライアントであり、制作チームと共に走ってくださったB-biz LINK様、別府市、そして方々のお力添えがあったからこそ、完成の日を迎える事が出来たと思っています。この動画を通じて別府市は温泉という天然資源が豊富な地質学的にも奇跡的な場所であること、そしてその温泉資源を満喫できる魅力的な場所であることを世界中の方に知っていただければと思います。
制作チームのご紹介:
プロデューサー: Phuong Miyajima
監督/ 撮影/ 編集: Watcharainthorn Khamkerd
プロジェクトマネジャー: Kanae Tsutsumi
脚本制作(パートナー): Eugene Wanyama, Margie Banin
ナレーション: Carlin Tools
CG制作: The Post Bangkok Co., Ltd.
音声制作: One Cool Production Co., Ltd.
楽曲制作(パートナー): Jaithep Raroengjai
カラーグレーディング: Chanon Wangtrirat, Velcurve Co., Ltd.
メイキング映像撮影・編集: Yuiko Shiozawa, Marin Ogasawara
撮影期間中に各所でご協力をいただきました別府市民の皆様、友人、知人にもこの場を借りて感謝を申し上げたいと思います。温かいご協力をありがとうございました。